川上弘美さんの本、ちょっと前に読んでみたいなーと思っていて、そのときは「ざらざら」って本を買おうと思っていたのだけど、本屋さんにいったら新刊のこの本がでていたので、こっちを先に読んでみました。
帯には「川上弘美は細心の注意を払って、これ以上ないほどていねいに恋愛を取りあつかう。」「極上の恋愛小説」って書いてあったから、しっとりな恋愛短篇小説を想像していたのだけど、けっこうイメージと違っていて、それはそれで新鮮でした。なんというか、ほんと、何とも言えない感じなんだよ。恋愛というよりも、不思議、奇妙、ぼんやり、もやっと、みたいな言葉のほうが合うかな。登場人物は、変わったキャラクターが多いのに(例えば、科学者の父によって作られたクローンの女の子とか)、描かれている感情はすごく日常で、どこか自分も感じたことがあるような切ない感覚だったり、微妙な感覚だったり。1番印象に残ったのは、表題作ではなく、主人公が母親をドライブ旅行に連れいく「夜のドライブ」。ここに出てくる母親の姿がなんだか自分の母親に重なってしまいました。いらないと言ってもお弁当を作ってきちゃうところとか、途中眠ってしまって「あ、もう着いたの?」って目を覚ますところか。夜のドライブをせがむ母親の言葉も、主人公が未婚なところも含めて、老いた母親に対する感情が重なってしまうのか、読み直しても、またうるっときちゃうんだよね。
全部で7つの短篇集、これ以外はわりと恋愛をテーマにしていますが、激しい恋愛ものよりも、ゆらゆらっとした感覚を味わいたい人にはオススメです。