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キンモクセイと音楽とハートブレイクと

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この時期、歩いているとふとキンモクセイの香りに包まれることがある。特別好きな香りなわけではないけれど、この匂いがすると不思議とほっこりした気分になるんだよね。

こんな風に季節の変わり目を感じたときに思い出すのは、遠い昔の大学受験のこと。当時はまだ珍しかったAO入試(自己推薦)で受験をした。キャンパス訪問で学長の話を聴いて、もうここしかないって思って、一芸も特技もないのに「やる気あります」だけで受けたんだよね。
その面接のとき、面接官に「あなたがこの学校に入ったら、大学にとって何かいいことあるんですか?」と聞かれて、「わたし、季節の変わり目とか、ちょっとした変化にすごく敏感で、そういうささやかな幸せを皆に分けてあげられると思うんです」って答えた。女性の教授が「あら、それ、いいわね!」って共感してくれたけど、男性の方は呆れ気味に苦笑いしてた。で、受かった(笑)。論文には「尊敬する人はマイケルジャクソン」って書いた。今から考えると、どれだけピュアだったんだ?って思うけど、当時ドリカム大好きで吉田美和かぶれだった私らしかったかも。
大学時代は、たくさん音楽を聴いた。ちょっとマニアックなサークルに入って、大きなスピーカーかついでイベントのPAしたり、キャンパスFMやってた。先輩や後輩からもたくさんいい音楽を教えてもらった。最初は車のアンテナを使って窓から出して放送してたけど、ある日、校舎の屋上までハシゴを登って大きなアンテナ取り付けたことは今でも鮮明に覚えてる。好きな曲をかけてしゃべるのも大好きだったけど、自分がセッティングしたPAで、バンドやアカペラグループの人たちが楽しそうに歌ってるのを、後ろで見てるのが好きで、左右のバランスとかハウリングとかチェックしてちょっと調整しては、見守る・・・みたいなね。

そんなこともあって、就職するときは、みんなが音楽を楽しむことを陰で支えるような仕事がしたいと思って、今の会社に入った。社内でもレアな仕事だったけど、建築士の先輩と元レコーディングエンジニアの上司に恵まれて、ホールや映画館やスタジオの音響設計の仕事をさせてもらった。うちの会社で「現場」って言えば普通は店頭だけど、私の場合は工事現場。長い工期の後、最後の調整を終えて、広い空間の一番真ん中の特等席に座って目を閉じて、確認用の1曲を聴く時が「この仕事やっててよかった」って思う瞬間。

さらに、夜はボランティアで地元のコミュニティFMで深夜の3時間番組を持たせてもらって、まさに音楽が溢れる日々。かける曲は自前で用意してたから、みんなに聞いてほしい曲をいつも探していたし、リスナーさんにも知らなかった曲をたくさん教えてもらった。

その後、1回別の業界に転職したけれど、元のグループ会社に戻って、今度は商品企画の仕事についた。世界のすばらしいアーティストやサウンドエンジニアと関わる機会ももらったり、直接会うことはなくても、自分が担当した商品が音楽やコンサートを作る一部になっているのがこれまた幸せだった。今から考えるとすごい貴重な経験させてもらったんだなって思う。

でも、そんなこんなしているうちに、20代の後半のある日、大企業の子会社は経営難で潰れて解雇。そこで私の音との熱い関係は止まってしまった。

幸い縁あって、職種は違うけど最初の会社に契約社員で取ってもらって再就職。そっから正社員になって今では管理職っていう這い上がりっぷりは、ガッツあったと思うし、一度仕事を失ったからこそ、仕事に対する姿勢も変わった。結果として今の仕事は私に合っているみたいだし、東京に戻ったことで、ファッションに目覚めたり、いろんな出会いもあり、今の私があると思うんだけど、、、、
心のどこかで、音に、音楽に、ハートブレイクしてたんだよね。
CDを買うこともラジオを聴くことも減って、大きなステレオセットもスピーカーも封印して、いい音を聴くのすら敬遠してた。いい音にこだわってたことを思い出さないように。時々LIVEに行くと、感動するんだけど、一方で、ホントはこのステージの裏側にいたかったな、って気持ちを抑えてた気がする。

時は流れて、ちょっと前のこと、地元の駅前でステキな歌を歌うシンガーソングライターの男の子と出会った。偶然が重なって出会った歌声に、なぜか通り過ぎることができなくて、足を止めたら、聴き入ってしまって。なんだろう、単純な「うまい」じゃなくて、ほんと「心が動かされた」って言葉がぴったりかもしれない。それから、何度かストリートライブで彼の歌を聴いているうちに、彼の仲間たちと触れ合ううちに、自分の中に閉じ込めていた音楽への気持ちが、止まらないくらい戻ってきて、「あぁ、わたし、こんなに音楽好きだったんだ」って思い出しちゃった、、、ほんと自分でも驚くぐらいに。
家にいるときも、電車の中でも、音楽を聴くようになって、久しぶりにカラオケも歌って、身の回りに音楽が溢れる生活にすっかり戻った。んー、うまい例えが見つからないけど、ディズニー映画で白雪姫とか眠りの森の美女が目覚めた感じ?悪い魔法が解けたような開放感と、自分の本能が好きな音、好きな音楽、好きな声、好きなリズムを思い出して。そして音楽以外にも、ささやかな毎日の中に楽しいことや笑いたくなることがたくさんできた。

そう、ここ数ヶ月、プライベートで悲しいできごともあって、かつてないほどに自分と向き合ってた。でも今は、そういう時間があったからこそ、自分が成長したと思えるし、そっと見守ってくれていた友人たちの存在にも感謝してる。この出会いで乗り越えられたのは、直近のハートブレイクだけじゃなくて、長年の音楽へのハートブレイクだったのかもな、なんて思う今日この頃。
そして、最初に書いた面接の答えたみたいに、風の香りに、日々のできごとに、ささやかなシアワセを感じられるような自分がちょっと心地よくて、今日も朝から川辺をランニングしちゃった。
I believe in power of music.

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